Tom Curran, Ph.D., FRS (英国王立協会フェロー)

Former Executive Director and CSO, the Children’s Mercy Research Institute & Professor of Pediatrics at the University of Missouri-Kansas City School of Medicine, Professor of Cancer Biology in the University of Kansas School of Medicine, MO, USA

Tom Curran博士は、米国ミズーリ州カンザスシティにあるChildren’s Mercy Research Instituteの創設者であり、同研究所のエグゼクティブディレクター兼最高科学責任者(CSO)を務めました。Donald J. Hall Eminent Scholar in Pediatric Researchの称号を授与されるとともに、ミズーリ大学カンザスシティ校医学部の小児科教授およびカンザス大学医学部のがん生物学教授としても教鞭を執りました。同研究所の設立にあたり、3億ドル以上の資金を調達し、新たな研究施設の建設および多様な分野の優秀な研究者の採用に尽力しました。

Curran博士は、2001年に米国癌研究会(American Association for Cancer Research, AACR)の会長を務め、2000年から2005年には米国国立がん研究所(National Cancer Institute, NCI)の科学諮問委員会のメンバーとしても活動しました。その業績が評価され、2005年に英国王立協会(Royal Society)のフェローに選出され、2009年には米国科学アカデミー医学研究所(Institute of Medicine, National Academies)のメンバーに、2012年には米国芸術科学アカデミー(American Academy of Arts and Sciences)のメンバーに選ばれました。さらに、2020年にはエディンバラ王立協会(Royal Society of Edinburgh)の対応会員(Corresponding Fellow)として選出されています。

その卓越した研究業績により、Curran博士は数多くの賞を受賞しています。1992年にはPassano Foundation Young Scientist Award、1993年にはAACRのOutstanding Achievement in Cancer Research Award、1994年にはCamillo Golgi Foundationおよびイタリア神経科学アカデミーからGolgi Award、そして2015年にはChildren’s Brain Tumor FoundationからFred Epstein Lifetime Achievement Awardが授与されました。さらに、1988年から1992年の間における分子生物学および遺伝学分野での高被引用研究者として、Institute for Scientific Information (ISI) によるランキングで第4位に位置づけられました。

Curran博士の研究は、がん、シグナル伝達、ゲノム、生物学、神経科学の分野にまたがり、その成果は300編を超える論文として発表され、75,000回以上引用されています。代表的な研究としては、誘導性Fos-Jun発がん性転写因子複合体の発見およびその多様なシグナル伝達プロセスにおける機能の解明があります。また、古典的な運動失調症モデルであるreelerマウスの原因遺伝子「reelin」の同定と、それが発達期の脳における神経細胞の移動制御に果たす役割の解明も含まれます。さらに、過去20年間にわたり、小児髄芽腫の治療を目的としたHedgehog経路阻害剤の前臨床研究を先駆けて実施し、その成果はPhase I/II臨床試験に結びついています。